・”そうじ、手入れ、オケ作り、レイアウト” … 雰囲気作りのポイント
雰囲気、品揃え、価格・情報、サービス、… この4つのポイントがしっかりと押さえられていれば、お客様に満足して頂けるショップが出来る筈だと述べました。
そこで、ここでは第一番目のお客様がつい立ち寄りたくなる‘雰囲気’作りのポイントを述べてみたいと思います。
まず1番目。これは何と言っても‘そうじ’です。
床だけではありません。棚の上は勿論のこと、電球の玉や黒板もピカピカに磨く必要があります。電球が切れて新しいものと取り替えた時、一方に埃を被った電球があったりすると良く分かります。新しい電球は当然透明感があり、光にも力があるように感じます。一方、古くて埃を被った電球は、何だかだるい様な感じがして人を引き付ける力がありません。
また黒板も、雑巾で2,3回拭いた真っ黒な黒板の文字からは活きの良さを感じ、目が引き付けられますが、一度だけ拭いて前のチョークが少しでも残っているような黒板からは鮮度など全く感じません。
そのような訳で、雰囲気作りの第一歩、それは気合の入った‘そうじ’にあるといえます。
次に2番目。‘そうじ’が出来たら今度は花の‘手入れ’をします。
どんなに掃除の行き届いた店でも、水の下がった花や花粉が花弁についた花、折れたままの枝などを少しでも見ると、全部の花の鮮度感が吹っ飛んでしまいます。
店内の花全てが一本残らずシャキッとしているよう細心の注意を払います。
また、その際に花のみならず、水のチェックをすることも大切です。
オケの中に少しでも滑りがあるとアッという間にバクテリアが繁殖し、花の導管を閉塞させ、花を傷めてしまいます。
手入れをする時は、花のみならず、葉や花の切り口、バケツの中の水などもチェックする必要があります。
花の‘手入れ’が出来たら、3番目は‘オケ作り’。
ポイントは全てのオケをそのままリビングルームに飾れるようにすることです。
花とオケの大きさ、ボリュームがマッチしているとそのままリビングルームに飾りたくなるものです。
しかし、花に対してオケが深すぎると花が息苦しそうに見えて飾りたくはなりません。
また、花とオケのサイズは合っていても本数が多過ぎるとこれまた息苦しそうに見えるし、逆に少な過ぎると残り物のように見えてしまいます。
適当なサイズのオケに適量を入れる必要があります。
この‘オケ作り’に関しては、午前中、つまり朝の水替えのすぐ後は結構出来ている店がありますが、これを閉店時まで一日キープ出来る店はそうそうありません。
朝上手く完成されていたオケの花が減ってきた時にどうするか?ここが本当のポイントになります。
50本入って完成されていたオケに10本だけ残っていたら…(このままでは残り物にしか見えません。)
方法は2つあります。
一つは10本だけでもリビングルームに飾りたくなる様な口の細い花瓶などに移し替える。
もう一つは色味のマッチする他の花やグリーンなどをそのオケに足して50本分のボリューム感を出し、やはりリビングルームに飾りたくなる様にする。(色味のマッチする花の丈が合っていない場合、少々切ってでもオケを完成させる必要があります。)
このどちらかを行うことによって、今まで残り物のようにしか見えず、お客様にとって買う対象にならなかった10本の花が再度その魅力を吹き返し、目の中に飛び込んでいく様になります。(経験上、面白いほど。)
雰囲気作りが上手く出来ていない時は、大体この‘オケ作り’で引っかかっていることが多いように思います。
さて、‘オケ作り’が出来たら4番目、最後は‘レイアウト’に取り掛かります。
花の美しさは花だけに凝縮されている訳ではありません。
カラーなどのようにそのラインが美しいものは、その茎のラインをしっかりとお客様に見て頂きたいものです。そのためには当然ある程度高い所に置く必要があります。
逆にガーベラの様に上から見ないとその良さが分からないものは、高い所に置いてもその魅力は伝わりません。
このように、花によって置く高さを考慮する必要があります。
また、当然の事ながら色に関しても十分考慮してレイアウトをする必要があります。
同系色の花を集める時はそんなに問題はありませんが、ピンク系と黄色系が横に並ぶ時などは一歩間違うと何か垢抜けないものになりがちです。
同系色のコーナーでも上手く指し色が入ると、そのコーナーがぐっと引き締まります。
高さと色を考えただけで十分かと言うと、それだけではしっくりこない事が多々あります。
例えば、ネイティブ系(オーストラリアなどに自生していて日本ではめったにお目にかかれない珍しいもの)の花を色味が合うだけで他の花と合わせても、浮いてしまいます。
やはりそれぞれの花の持っている、イメージを合わせる事も大切です。
トロピカルな花は色味が少々違っていても集めてその空気感を作った方がお客様に伝わり易いものです。
このようにレイアウトに関してはいろんな要素が絡まってくるので、時間をかけて現場で経験を積むしかマスターする方法はないと思います。
また、レイアウトに関して、花の量が減ってオケの数が減っても花のある面積を一定に保とうと、オケとオケの間隔を広げている店をよく目にしますが、スカスカした店というのは決してお客様に魅力を感じて頂くことは出来ません。
面積は狭くなっても構わないので、密度を一定に保つ必要があると思います。
Not 面積一定 , but 密度一定????
長くなりましたが、それだけ‘雰囲気’作りも奥深いということです。
花屋が手を入れることによってお客様に花の魅力をより強く感じて頂く。
これこそプロの花屋冥利に尽きると思いますし、花屋の楽しさでもあると思います。